月まで片道30分、ルナ・マリアまで

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「どうなんだろう。これは、セックスとか、そういうことが絡んでしまうのかな」 「わ……、わかんない、よ。そんなの」 「一緒にいすぎたね」 ふっと青がかがみ込む。額にそっとくちびるが触れた。体温が上がる。 「うん、でも、きっと、そうだよな」 「……あお、」 「かもめの家に行きたい」 青の指からほんの少し、力が抜けた。 「でも、それは、やめた方がいい気がした。お仏壇に線香あげれないけど。……行かない方がいいって思った時に、答えは出てる」 「……来ない?」 「うん。行かない」  青は鮮やかに笑う。 「だから、帰ろう。送るから」 「青」 冷たいと言われた指を、青の骨の目立つ指に絡める。耳の方まで熱かった。どうせ暗くて見えやしないのに、うつむいてしまう。 「……来てよ、って言ったら、どうする?」 乾いたくちびるを舌先で舐める。かすかに潮の味がした。 「いいよ、来てよ」 「俺は、今、かもめのお父さんもお母さんもいないことを知ってる」 「……今まで普通に来てたじゃない」 「だからだよ。かもめ、俺はね、かもめに力で勝てるし、かもめの優しい言葉につけ入るくらいの頭はある。……やめよう。ごめん。忘れてよ」 「……意気地なし」 青が笑う気配がした。裸足のまま歩き出すのに着いていく。手はやんわりと振りほどかれた。 ぱちんぱちんと古びた街灯が点滅する。羽虫が舞っている。公民館の前の自販機で、青が足を止めた。 「なにか買う」 「……ん」 小銭入れを取り出して、百円玉を自販機に投入する。麦茶を一本。その場で半分飲んで、青に差し出す。ありがとう、と言って青が一口飲んだ。 黙って歩き出そうとしたら、こつんと手の甲に青の手があたった。
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