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定期テスト初日の朝、誠治は枕元の時計を見た瞬間青ざめた。
「やばい! 寝坊した!」
以前までは早起きして庭を掃き清めていたが、今は飛鳥が清めてくれるので油断した。誠治は大急ぎで着替えると、階段を降りようとして足を滑らせ転がり落ちた。手に持っていた鞄が玄関に飛んでいく。
「うるさい」
階段の下に立っていた飛鳥が眉をひそめる。誠治は鞄には目もくれず、立っていた飛鳥を見上げた。
「起こしてくれればいいのに!」
「自業自得」
飛鳥がため息を吐く。誠治は軽く舌打ちすると、台所に飛び込んで流しで顔を洗った。手早く歯を磨いて、焼けている食パンを口に銜える。煙草を銜えて新聞を読んでいた龍太が目を丸くする。
「珍しいな、寝坊なんて」
「テスト勉強してて、寝るの遅かったんだ」
誠治は手近にあったコップに牛乳を注ぐと一気に飲み干した。
「車で送っていこうか?」
「いい。走ればまだ間に合うから」
誠治は残っていた食パンを口の中に放りこむと、玄関に走った。転がったままになっていた鞄を手に取る。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
飛鳥の無愛想な声が聞こえた。清められた庭を荒らさないように走り抜けると、門扉を閉める音がした。さやかが飛び出してくる。
「さやか!」
「やだ、誠治くんも寝坊したの?」
「そう言う事。急げばまだバスに間に合うぞ!」
「うん」
誠治はさやかの手を取ると、閑静な住宅街を走り抜けていった。
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