ありふれた1日

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 誠治が学校に行った日は、かならずさやかと一緒に帰る。小学校の頃からずっとそうしているのだが、今日に限っては俊夫の話があったので妙に後ろめたい。誠治はさやかに話しかける事もできず、無言で歩いていた。 「どうしたの? 誠治くん」  さやかが戸惑うように誠治を見上げる。 「さやかちゃんって、好きな奴、いる?」  言ってからまずいと思った。慌てて口を押えた誠治に、さやかが首を傾げる。 「誠治くん、好きな子いるの?」 「いや、そうじゃなくて。さやかちゃん、可愛いから結構モテるんじゃないかと思って」  誠治は焦って手を振った。もう、何を言ってるのか自分でもわからない。さやかは吹き出すと誠治の肩を叩いた。 「そんな事ないよ。それを言うなら、誠治くんの方がモテモテだよ」 「はあ?」 「ほら気付いてない」  さやかは誠治を意味ありげに見つめる。 「うちのクラスの女の子達、誠治くんの大ファンなんだよ。さっきだって、誠治くんと何話してるの? とか聞かれたし」 「げ!」  誠治は思わず身を反らした。誠治の姿に、さやかが声を上げて笑う。 「クラス替えの直後なんて、どんな関係なのかとか根掘り葉掘り聞いてくるし、家が隣だって言ったら『神道くんっていつもどんな格好してるの?』とか聞いてくるし。大変だったんだよ」 「信じらんねえ」  俊夫も似たような事を言っていたが、さやかにまで言われるとは思わなかった。思わず顔を顰める誠治に、さやかが首を傾げた。 「ねえ、誠治くん。なんであたしがモテるって話になったの?」 「俺が一番驚いてる」 「え?」 「なんでこんな話になっちゃったんだ?」  誠治は頭をかいた。俊夫の話が頭にあったのは確かだが、さやかに話すつもりはなかったのに。困り果てている誠治に、さやかは苦笑すると誠治の手を掴んだ。 「ま、いいか。みんなが待ってるよ。早く帰ろう!」 「そうだな」  誠治はさやかの手を握り返すと、家までの道を走った。
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