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今自宅に居るのは、兄さんと小春の二人っきり。
だからお兄さんの袖口をクイッと掴む。
「そばにいて、下さいね?」
「まあうん。大家さんに連絡が取れるまでは居させて貰おうかな」
大家さんと連絡が取れるまでの限定付き。
頭を掻いて困りながらも受け入れてくれたお兄さん。
「名前なんて呼べばいい?」
「じゃあ、小春で」
「小春ちゃんね」
お兄さんの名前は知らないけれど小春は名前を言う。
『小春ちゃん』という低声でゆったりとした声色に癒されてしまう。
「あ、あの、また・・・・・・」
二人の会話が一旦終わると、声に出して何か言いたげな小春。
ん? と察したお兄さんは、小春が自らの口で言うまで待っててくれた。
じーっと目の前で見つめてくるお兄さん。
ついお兄さんの顔を見ていたら、小春の頬が桃色に染めてしまう。
「頭、撫でてもらってもいいですか」
やっとの想いでお願い事を言えた。
なのに最後の語尾が上がらなかったのだ。
お兄さんにちゃんと読み取って貰えたか心配になる。
その束の間に生暖かい手の平が感じられた。
「こうでいい?」
「う、うん」
お兄さんが分かってくれた。
小春のお願いさえも聞いてくれた上に、優しい口調で胸が高鳴る。
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