7月15日、アンダー・スカイ

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「……っていうか、今日、全然七夕じゃないんすけど。先週ですよね。何で急に?」 「さっき急に雨が降っただろ」両手をヒラッとさせ、雨のジェスチャをするタケナカさん。「傘を買いに来たちっちゃいお客さんが、お母さんにくっついて『七夕じゃなくてよかったねー!』って言っててな」 僕は鞄のチャックを閉めながら、ああ、それは可愛らしいですね、と述べる。そろそろSNSでもイベントの話題が沸騰してくるころだろう。ネタバレは見ないようにしないとな。 「だろう? いいよなあ」彼は少し寂しげに笑う。 本人に直接聞いた話ではないが、彼はバツイチで、年1度会えるかどうかの幼い息子がいるらしい。仕事はできるが、家庭的な気づかいは下手。良かれと思った家族サービスは空回り。出会って3か月の僕からも、なんとなくそんなタイプに見える。 夕方のピンチヒッターで着用していたエプロンを不器用にたたむ背中を眺めていると、口を衝いて質問が飛び出した。 「タケナカさんは、願い事、あるんですか」 僕の方は見ず、いやに几帳面に折られたエプロンの方を見つめながらタケナカさんはつぶやく。 「七夕、年に3回くらいあったらいいのにな」まあ、罰だからしょうがないけどな、と笑った。織姫と彦星は、出会えなかったら1年間それきりだ。1年間有れば、人間なんてガラッと変わってしまう。と彼らは神様みたいなものだから、尺度が違うといえばそれまでだが……。 「そっすね……。もうちょい、チャンスをあげてもいいかと思います」 何と言っていいかわからず、もごもごと言葉をひねる。 「えっと、せめて、梅雨が終わったくらいのときとか……、雨がない…えっと…」 「「晴れの特異日」」 声がそろったことで、少し場の空気が和んだ。 さっきみたいに顔を見合わせて、はは、と笑う。
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