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地下道の先にて
ある年の日が強く照っている夏のある日
俺は、この●●●町の過去を見るために、3時間ほどかけて、電車で訪れた。
ここは、第二次世界大戦の時、飛行場があり、空爆によってたくさんの児童が死んだそうだ。
噂では、大日本帝国の秘密兵器の超最新航空機が開発されていたとか…
さて、ここまでは「町」の過去だ。
俺が見に来たのは、この町にある駅だ。
この駅には、戦前から戦後数年間使われた、地下道があるのだ。
距離は少ししかないが、コンクリートでできた頑丈なモノである。
それが今でも残っているなんて、とても珍しい話だ。
「一人なんて珍しいねぇ。学生かい? コーヒー飲む? お菓子もあるよ。 100円もらうけど」
駅に一人だけいるばあさんが、案内をしてくれた。
やはり、この駅はすごい。洗濯機に冷蔵庫 蓄音機に電話まで。初代のモノからほぼ全て揃っている。
当時の駅員室まで案内された後、俺が目当てにしていた地下道に行った。
「ここはね、戦前から戦後から数年間使われてた地下道だよ」
そんなもの、来る前から知っている。
「奥には、今の駅のホームにつながる階段があるよ。こんなもんかね。あとは自由に見て回るといいさ」
そう言うと、ばあさんは地下道の階段をのぼり、元いた部屋に戻って行った。
先に進むと、上に続く階段があった。この駅は、電車の中で運賃を払うため、駅のホームは自由に行ける。
扉があるはずなのだが、光がさしている様子はない。やはり、閉じられているのだろうかと思い
俺は階段を上った。何かがおかしい気がするが、気のせいだろう。
階段を上った先にあったのは、赤い光が窓からさしこむ扉だった。
俺が来たのは昼だったが、いろいろとまわっている間に夕方になったのだろう。
しかし、やはり何かおかしい。扉の外には茜色の夕日があるのだ。
夕方と言っても、夏はまだ日がギラギラと照っているはずだ。ましてや、茜色の夕日と赤い空は秋にしか見られないはずなのだ。
ヤバい。 確実にヤバい。 この扉を開けたら確実に戻れない。
俺の五感とあるはずのない霊感が、体の周りを雷のような速さで動き回り、俺にそう伝えている。
しかし、俺の足は動かない。なぜか動かないのだ。
その時、駅の外に、無数の影が見えた。駅のホームにゆっくりと歩いてくる。
影がどんどん近づいてくる。近づいてくるにつれて、その影達の形がはっきりとしてきた。
俺は、それを見て絶句した。
頭のない子供のような影 腕のない大人の影 他にも、頭が欠けた子どもとか 小さい腕を手で握るように持つ大人とか
見て分かるが、確実にこの世のものではない。
最悪だ。逃げようと思っても、足が動かない。
その時
「なんしよるん!!」
さっきのばあさんが、後ろから叫んだ。
それによってかわからないが、足が動いた。
ばあさんが、階段をのぼり、俺が危ないとわかっていても、後ろ歩きで階段を降りようとした時
窓に、無数の人が映った。
全員がこちらを見ている。そして、全員が焼きただれている。
見てしまった。
「見ちゃいかん!! はよこっちきい!!」
ばあさんが、俺の腕をつかんで、階段から引きずりおろした。
引きずりおろされる間にも、窓に映る顔は増えていく。老若男女関係なく。
見えなくなった時には、俺は地下道にいた。
「あたしが帰る時に、あんたが、いきなり地下道の先に歩き始めたから、気になってついて行って見たら」
おかしい このばあさんは「駅のホームにつながる階段がある」といったはずだ。
俺は気になり、聞いてみた。そして、戦慄した。
「なんだいそれ。あたしは階段があるとか言ってないよ… ほら、見てみな」
そう言われ、階段があったところに目を向けると
階段はなく、コンクリートの壁があった。
俺はその後、すぐにその町を離れた。
駅のホームに来た時、最初に感じたおかしさに気付いた。
階段後はあったが、コンクリートで埋められていたのだ。
そして、あの時見た扉があった。
電車に乗って、町を去る時に、あの扉の奥に人の顔が無数に見えたのは気のせいであろう…
その後、俺が独自で調べたことで、興味深いものがあった。
その町では、空襲の時、地下道に逃げ込んでいたそうだが、ある空襲の時に、間に合わなかった人たちがいたそうだ。
その人たちを、俺は見たのだろう
あの町はとてもいいところだったが、二度と行くことはないだろう。
俺が経験した、夏の日の話である
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