海と星と満月と

1/1
前へ
/6ページ
次へ

海と星と満月と

 窓から入ってくる風がカーテンを揺らした。  ベッドに寝たまま顔を窓に向けると、辺りが暗くなっているのに気づく。  ……もう夜なのね……。  うとうとしていると、今が昼なのか夜なのか、分からなくなる。  外に出て夜空を見たくて、テラスへ向かうためにベッドから降りて立ち上がった。  寝てばかりいたせいか、足がふらついて転びそうになる。 「あ……。」  その時、後ろから私を支えてくれる腕があった。  「急に立ち上がってどうしたんだ?はるか。」  振り向いて見上げると、心配そうにこちらを見ている彼と目が合った。  深い海のような、藍色の瞳。  ゆるくウエーブのかかった漆黒の黒髪。  きれいな顔立ちの、彼。 「レン……。来てくれてたの?」  私は彼に笑顔で聞いた。 「ああ。お前の側にいたくて……。それで、どうしたんだ?」 「空が、見たくなって……。」  私は顔を窓の外に向ける。  レンも同じように窓の外を見た。  そして、 「……分かった。」 と言って私を抱き上げて、窓からテラスへ出てくれた。  彼に抱えられたまま、視線を上げると目の前には海と空が広がっている。  海は昼間と違って暗い色をしているけれど、どこまでも穏やかで優しい感じがする。  視線を上に向けると、無数の煌めきを湛えた星の海と、そこに浮かぶ満月が見えた。 「きれいね……。」  私は彼に体を預けながらつぶやいた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加