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永遠に
……なんだかまぶたが重くなってきた……。
「……レン。私、眠りたい……。ねえ、あなたの歌を聴かせて……?」
彼が目を瞠り、そして苦しそうに顔を歪めた。
随分昔に、私がこの世を去る時にはあなたの歌を聴きながら眠りたい、と話したことがあった。
覚えたのね……。本当に本当にごめんなさい。
彼は私をテラスに座らせ、その後ろに座って私の体を支えて優しく抱きしめた。
レンが耳元でささやく。
「……俺たち一族は不死ではない。俺の命が尽きた瞬間に、俺はお前に会いに行く。待っててくれ。」
「……必ず来て。待ってる。」
私は彼の体温を背中に感じながら、空を見上げた。
今にも地上に降リ注ぎそうな、満天の星空。
地上の全てが癒されるような満月の光が、海を照らしている。
彼が私の為に……私だけの為に歌い出す。
何度聴いても、心震えて涙が溢れる。
あなたの歌が、永遠に好き。
一つだけ、これでよかったのかと今でも迷っていることがある。
あの時。レンが海の魔女に会いに行こうとした時のこと。
レンが望むまま人間になって、私と同じ時の流れを過ごした方が、彼が独りで生きてく時間は少なかったはずだ。
……ううん。やっぱり私はあの選択しかできなかったような気がする。
私は……とても幸せだった。
本来なら出会うことのないあなたと出会えて……。
本来なら一緒にいることが許されないだろうあなたと……、人生を寄り添えた……。
「……心は、永遠に……あなたの側に……。」
レンの歌を遮らないようにそっとつぶやいて目を閉じた。
刹那、顔に雫が落ちてきて、くちびるに彼の口づけを感じた。
私が流した涙の上から彼の涙が頬に伝うのを感じる。
……彼の顔が離れていく気配がした。
そしてまた、レンが歌を歌い出す。
彼の美しい歌を聴きながら、私は眠りについた。
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