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海と星と満月と
窓から入ってくる風がカーテンを揺らした。
ベッドに寝たまま顔を窓に向けると、辺りが暗くなっているのに気づく。
……もう夜なのね……。
うとうとしていると、今が昼なのか夜なのか、分からなくなる。
外に出て夜空を見たくて、テラスへ向かうためにベッドから降りて立ち上がった。
寝てばかりいたせいか、足がふらついて転びそうになる。
「あ……。」
その時、後ろから私を支えてくれる腕があった。
「急に立ち上がってどうしたんだ?はるか。」
振り向いて見上げると、心配そうにこちらを見ている彼と目が合った。
深い海のような、藍色の瞳。
ゆるくウエーブのかかった漆黒の黒髪。
きれいな顔立ちの、彼。
「レン……。来てくれてたの?」
私は彼に笑顔で聞いた。
「ああ。お前の側にいたくて……。それで、どうしたんだ?」
「空が、見たくなって……。」
私は顔を窓の外に向ける。
レンも同じように窓の外を見た。
そして、
「……分かった。」
と言って私を抱き上げて、窓からテラスへ出てくれた。
彼に抱えられたまま、視線を上げると目の前には海と空が広がっている。
海は昼間と違って暗い色をしているけれど、どこまでも穏やかで優しい感じがする。
視線を上に向けると、無数の煌めきを湛えた星の海と、そこに浮かぶ満月が見えた。
「きれいね……。」
私は彼に体を預けながらつぶやいた。
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