5分だけの恋人

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「学校で全然笑わない沙羅ちゃんのこと、俺が笑わせたい。また笑顔がみたいってずっと思ってた」 「……Bくん」 「ふたりのときはBくんなんて呼ばないでよ。竜」 「り、竜……」 突然呼び捨てにするのはなんだかハードルが高いけど。 「今日やっと沙羅ちゃんと一緒に撮影ができるって知って、俺めっちゃ緊張してたよ」 「え、そんなふうに見えなかったよ……」 「見せないように必死だった。でも、それ以上に沙羅ちゃんが緊張してたから」 クスクスと笑う竜。 「も、もう」 「でも5分間だけだけど、恋人になれて……やっぱり好きだって思ったんだ。5分間だけじゃなくて、ずっと俺の恋人でいてほしい。俺にだけ沙羅ちゃんの笑顔を見せて」 「……っ、竜」 こんなにキラキラしている男の子があたしみたいな女の子でいいんだろうか。 いまはお姉ちゃんのメイクの力で別人みたいになっているだけなのに。 竜から聞いた話は今日の話なんかじゃないけど、自分に自信がなさすぎてこんな卑屈な考えになってしまう自分が嫌い。 「俺は沙羅ちゃんのことずっと好きなんだよ。どんな沙羅ちゃんのことも好き。学校にいる沙羅ちゃんも今日の沙羅ちゃんもどっちも大好きだよ」 「……っ、なんでそんなこと言ってくれるの?」 あたしの嫌いなあたしのこともすべて肯定してくれる竜の言葉に涙が出そうになる。
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