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「ちょっと、5分間だけでいいから。ね?」
「嫌だよ、だれか他の人に頼んでよ」
「いいから、ほら。これかぶって……こっち見て」
お姉ちゃんにされるがまま、ウイッグをつけられ、メイクを施される。
「沙羅は元がいいから化粧映えするよね」
「元がいいなんて言うのお姉ちゃんだけだけだよ」
「何人も綺麗な女性を見てきているあたしが言うんだよー?」
あたしのお姉ちゃんは元モデルでいまは雑誌の編集長をしている。
今日は女子高生の間で人気の雑誌「CUTiE」でデート特集の撮影をするはずだったのに、モデルの子が怪我しちゃったんだって。
「ていうかそんなデート特集で5分間なわけないでしょ……」
「本当に5分間なの!デートして歩いて欲しいのはワンシーンだけで、あとはライトアップされたスポットとかを撮るのに、それを見てる後ろ姿だけだから……他の人でもよくて……ね?お願い」
「仕方ないなぁ……」
お姉ちゃんのこのお願いにあたしはつくづく弱い。
本当はもうこんなことやりたくないのに。
「絶対お姉ちゃんの周りにもっと綺麗な人いるのに……」
「あたしの目に狂いはないんだから!自信もってよ!」
いつも綺麗なお姉ちゃんに言われたって自信なんてつくわけがない。
幼い頃からずっと、あたしはお姉ちゃんの影だった。
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