Prelude:「宇宙の世界史」

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Prelude:「宇宙の世界史」

世界という単語が1惑星に存在する大陸に帰結する国家を示す言葉ではなく、惑星系、そして異なる銀河を意味する様になって22世紀。 人類は母星から脱し、広大な宇宙空間へとその生息域を広げた。 最初は小さなロケットから始まった人類の宇宙史は、後に様々な異星民族と関わり、貪欲にその技術を吸収し、持ち前の繁殖力の強さを活かす事で活動域を広げ現在に至る。 船団を組み、他星系へと旅立った人類。 だが入植地を求め方々へと散って行った人類は、やがてその余りに長遠な旅路が災いし、思想の相違が生じ争うようになる。 やがて彼らは異なる思想の同族を嫌悪し、同思想の多民族たちと共存を開始。複数の星間国家が樹立した。 それから数世紀。 現在、この宇宙には2つの巨大勢力と、中立を貫く幾つかの勢力が存在する。 1つは永世銀河帝国を称し皇帝による専制君主制を維持する【大銀河帝国】である。 旧態依然の身分制度と「服従、忠誠、皇帝の神性」を有した複数銀河を掌握する最大勢力として知られており、現皇帝は163代を数え在位年数は歴代皇帝最長の50年を数える。 もう1つは帝国と相対する【合衆惑星連邦】。 母星政治思想のうち過半数を占めた民主主義を基礎に敷く連邦には明確な身分制度は存在せず、複数の惑星代表が連邦議会(政府とも呼ばれる)で話し合い、指針を決議する集合惑星国家である。 そして最後に そのどちらにも所属せず中立を貫く独立政府が幾つか。そのうち最大のものがアヴェンシア星系に存在する【職技連合】である。 帝国と連邦の争いが熾烈を極める中、アヴェンシアでは「どちらにも属さぬ代わりに、どちらにも独自の技術を提供する」事でその立場を確立した技術者主権の技能集団で、現在、その内部には大きく分けて2つの勢力が存在する。 1つはアヴェンシア職技連合でも特に強い権限を持つ惑星【パーシヴァル】。 戦艦や通信機器、兵器の構想・作成に特化した職人コロニー「ヴォルトノット」を有し、全宇宙随一の技術力を誇る。 そして、もう1つ。 ヴォルトノットが開発した兵器のうち非常に特殊な戦闘機体ーー現在、複数の戦場や異星種討滅戦に於いて艦隊以上の戦力と評される可変型全領域戦闘兵器・聖唱機兵「セイレーン」とそのパイロット有する対ガプター殲滅組織【DIVA(ディーヴァ)】である。 ガプターとは宇宙全域に生息する異種族で巨大な昆虫の様な姿をしており、人類は統一覇権とは別にこちらとの戦いにも労力を割かねばならなかった。 通常兵器をほぼ無効化するほど強固な外殻を有する彼らは目下、全人類共通の敵であり、最大の脅威とも言える。そしてそのガプターに唯一致命的なダメージを与える事の出来る兵器がセイレーンだった。 セイレーンは全領域(陸、海、空、宙の四界全て)で活動可能な可変型戦闘機体であり、その動力にはDIVAで養成されるパイロット「歌姫(ディーヴァ)」が歌唱によって生み出す特殊な音波「聖唱(ウェイブ)」が用いられる。 セイレーンのパイロットであるDIVAの歌姫たちは組織の名を冠し「ディーヴァ」とも呼ばれ、その希少性と有効性から帝国は元より連邦でも厚遇されている。 そして 宇宙暦2119年。 物語は二大勢力が覇権を争う中、中立域であるアヴェンシア職技連合のコロニー、ヴォルトノットから幕を開ける。
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