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サムがはっと息を呑んだときには、リュウと彼の美しい連れはすでに背を向けていた。若者の輝くような銀髪がふわりと揺れ、その髪ごと背中に手を掛けるリュウは、まるで彼を光からさえ護っているように見えた。
ああ、そうなのか……
強烈な喪失感に座り込みそうになりながら、それでもサムは理解する。
あの美しいひとはリュウのものなのだ。支配、という所有ではなく------あのひとがそんなものに甘んじるはずはない------あのひとの存在こそがリュウを生かしている。リュウのために、あのひとは生きている。
サムと、クレイ夫妻はふたりを見送った。ほんのいっとき彼らの心の奥底から立ち現れてそれぞれの想いを遺し、また消えてゆく、幻想にも似たうしろ姿を。
ほのかな甘さをも伴う哀しみに、サムはやがてがっくりと肩を落とした。それを軽く叩いて、ダグが言った。
「さぁ、バーに行こう。今夜は久々に三人でゆっくり思い出話でもしようじゃないか」
“サミュエル・マイヤーの不思議な一夜”
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