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「なにを言い出すんだ ? その目で確かめたろう !? 」
「確かめたさ。彼はリュウじゃないよ。本当によく似てるけどな」
「馬鹿な…… ! 」
「おいおい、サム、僕らが彼を見間違うとでも思ってるのかい ? 」
諭すような口ぶりで言って、ダグはリュウ------絶対に------の前に手を差し出した。
「すまなかったね、きみ。でも、おかげで懐かしい夢を見させてもらったよ」
ちょっとためらったのちにその手が握り返されると、ついでサラが夫に倣った。すこしだけ泣きそうに震える声を張り上げて、
「会えて嬉しかったわ、若いひと。私たち、そりゃあリュウが大好きだったのよ。二十五年も経ったけど、私たちは幸せに暮らしてる。そして私にはわかるわ、リュウもきっとどこかで幸せに生きてる。愛するひとと一緒に」
笑顔の頬に、堪えきれなくなったように涙がこぼれた。
にこりとリュウが微笑んだ。サラに頷きを返して、サムに自ら握手を求めて来る。リュウと連れの若者をどうやって引き留めたらいいのか必死に思い巡らせながら、サムは仕方なくその手を握った。思いのままについ力がこもる。
「サムは作家でもあるんだよ。ファンタジー作家だ」
ふと思いついたようにダグが言った。
「機会があったら読んでやってくれ。------リュウも作家志望だったから」
リュウがちょっと目を瞠り------笑みを深くした。自然な貌だった。そして、さして力が入ったようにも思えないのに、サムの手の中からすっと離れてゆく。サムは慌てて指を伸ばした。無意識に、リュウの背後の若者の方に。それは彼の連れにも別れの握手を求めた風であったが------
リュウがわずかに身動いでその手を遮った。コバルトブルーの双眸が一瞬恐ろしく冷たい圧を放ち、拒絶する。
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