イオノレーサー

　俺はハヤオ。イオノレーサーのパイロットだ。

　イオノレーサー。それは来年新たに設立されるスピードスポーツの名で、直径５ｍ～１５ｍの立体的に作られた半透明のチューブ状コースの中をクラフトと呼ばれる浮遊する乗り物に乗り込み超高速でかっ飛ばす爽快レースだ。

　ゲーマーだった俺がこんな窮屈な乗り物に乗り込んで世界に飛び出す事になったのもゲーセンにあったシミュレーターのおかげだ。

　パイロット選抜には３年前からシミュレーターが国中に設置され、レースのプロアマ問わずゲーム感覚で多くの人に遊んでもらう事で国の持てる技術の粋を詰め込んで開発したクラフトを操る最高の人材を選抜すると言う試みだったらしい。
　俺は中でも群を抜いて成績の良かった二人のうち、その２位に２分もの差をつけて勝利していたのだから当然だろう。

　強化訓練は厳しいものだったが、ゲームと違い実際にクラフトを操るのは刺激的で興奮する体験だった。

　この興行で動く金額は非常に大きい、国家レベルのプロジェクトとも言えよう。それゆえどの国も第一回大会での優勝は必ず押さえておきたいはずだ。
　それを裏付けるかの如く、政府まで援助金を出している程だ。