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完成していたクラフトのさらなる改良、最適化されたコースラインの検証とデータ化、それらの視覚化とパイロットの習熟、すべてが高水準で着々と進んだ。
最終調整を終えた俺達チームはあらゆる国のコースを再現できるように可動式になっている練習用コースを実戦に則した設定にして実走した。
体にかかるGや激しい状況の変化、それらは思った以上の難易度で俺に襲い掛かった。だが俺もゲーマーだった頃の俺ではない。もう何時間もクラフトに乗り続けて来たのだ。実際チーム監督はこう評価してくれている。
「その動体視力はプロボクサーにも引けを取らず、状況判断の的確さや滑る様ななめらかなライン取りはもはや芸術と呼ぶに値する。他国のパイロットのデータが一切ないが、これ程理論値に近い記録を出す者など居ないだろう。」
俺達チームは勝利を確信した。
所が驚くべき報告が政府から入ったのだ。
とある筋から入手した他国のパイロットは俺よりも3分も速い記録をコンスタントに出していると言うのだ。
3分なんてタイム、誤差レベルではない。
政府は俺たちにあと5分記録と短縮するように言って来た。
だが俺達にしてみれば無茶振りも良い所だ! 俺達は既にやれることはすべてやっているんだ。最高のマシン、最高のナビゲート、最高のパイロット。
どこをどうしても5分なんてタイムを削ることは不可能だった。
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