かよ

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 一九四五年八月六日。  その日、広島市の朝の空は、太陽よりも眩しい光で照らされた。  毛じらみを吹き飛ばすかのごとく、人間が吹き消えた。ある者は身体が黒く膨れ上がり、皆バタバタと死んでいった。ある者は髪が燃え、ある者は肌がどろりと溶けた。  鉄骨の建物が崩れ落ち、家は火の手に包まれた。逃げ遅れた者がまた焼け死んだ。被爆で内臓を吐き散らして死んでいった者もいた。  爆心地にほど近い人間たちは、初めからそこになにもなかったかのように、死んだ。骨も跡形もなく、黒い影のようなものだけを、建物に染みつかせて死んでいった。  被爆の瞬間、誰かが壁にうなだれていたらしい黒い影の写真が、原爆の資料として今も残っている。
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