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空が段々と、赤みを帯び始めた。
携帯の緊急アラームが鳴り響き、そこら中からは嘆き声が聞こえてくる。
絶望に満ちた世界。
女は辺りを見回し、終末はすぐそこに迫っていることを改めて理解した。
女はもう一度空を見上げた。
人工的な光が小さく点滅している。あそこに愛する人がいる。
彼が今後、生きながらえることを確約されている。
その事実で十分だった。
終末が来ようと来まいと、自分が近いうちにお星様になるとわかっている女にとって。
人間は残酷である。彗星などその比ではない。
近くで、エネルギーの塊が大地に激突する音がした。
彗星の降り注ぐ頻度が、先ほどより明らかに増えている。
周囲の人々の絶望の渦は、より一層増した。
皆、人の形を一瞬で失った。
女は廃墟の中、真っすぐ立っていた。
死ぬまでに彗星が見たい。
皮肉にも死の瞬間の女の目には、彗星が映っていた。
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