ノラ猫の現実

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ノラ猫の現実

到着したオイラの顔を見ると三毛猫は ニャ~ンと安心したように目を細める 痛々しく傷ついた前脚は小刻みに震え オイラはすぐに手当てを開始する 持ってきたヨモギの葉をすりつぶし 傷口にたっぷり塗り その上から 水に湿らせた栗の葉でおおう お腹を空かせているだろうと思って 質屋の台所を通る時 偶然見つけて 失敬してきた骨付きの鶏もも肉一つ 貪るようにたいらげた三毛猫の現実 仔猫のうちに捨てられた三毛猫には 帰る家も頼れる仲間も 誰もいない ノラ猫のケガは普通 死を意味する
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