DIANA-141、これで最後にしよう

1/3
前へ
/3ページ
次へ
 DIANA(Destroyer of human Independent And Non-general Android)-141、アンドロイド破壊特化型アンドロイド-141。  これは、完全自立型でアンドロイドを破壊するためだけに開発・設計されたアンドロイドだ。  衛星軌道上にある141個のGPS兼用通信衛星によって構成されるグローバル・ネットワークと常に接続し、DIANA-141アンドロイドの個々の人工頭脳が決定出来ないような複雑な判断は、世界中に展開している数十万台におよぶDIANA-141アンドロイドの人口頭脳による超並列演算処理を行って判断する機能が搭載されている。  いわゆる、クラウド・コンピューティングであり、個々のアンドロイドが破壊されてもネットワークには影響が一切なく、人間による命令を必要としない完全に独立して戦闘を実行できる完全無比なアンドロイドだ。  ―― 「識別コード確認。JPN-520-0461、10時の方向・距離100メートル地点に展開中のアンドロイド部隊は『敵』と判断します」  DIANA-141シリーズのアンドロイド、ムサシ-634は量子暗号化された衛星通信で周りの仲間たちに連絡する。 「ハヤブサ-8823、了解。直ちに迎撃態勢に移る」 「ムジナ-627、了解。直ちに迎撃態勢に移る」  仲間たちはムサシの情報を元に次々に戦闘を始めた。  先ほどまでは、荒廃した街にふさわしい埃の混じった風のびゅうびゅうという音しか聞こえていなかった。しかし、今はビームサーベル同士の斬撃音と破壊されたアンドロイドの爆発音しか聞こえない。  幾度もの戦闘によりほとんどの建物は原型をとどめていなかった。  昔ココが日本という国の首都で、多くの煌びやかな服装に身を包んだ若者が青春という名の自由を謳歌していた渋谷という街である事を示すものは何もなかった。  駅前にあったはずの忠犬ハチ公やモアイ像は既に台座しか残っていなかった。  イチマルキュウ、と書かれた大きな看板は建物から崩れ落ち、アンドロイド達が戦闘で使用するレーザー銃の格好の標的になっていた。  ――  この戦争の引き金を引いた指導者の最後の一人が息を引き取ってから、いったい何年経ったのだろうか。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加