DIANA-141、これで最後にしよう

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 初めはささいなことだった、その争いは直ぐに終わると誰もが思われていたものだ。しかし、そこに発生した未曽有のウイルス性疾患。そして人口の急激な減少による社会的な混乱と経済的な破たん。  残った指導者は考えた『これはババ抜きゲームだ』と。生き残った国がこの星の全ての資源を握れると。  大昔、武器よりも人間の価値が安い時代。赤い紙一枚で国民を無尽蔵に戦争に送り込めた時代だった。しかしウイルスにより人口の大部分を失った国家において、その発想はもう使えなかった。  今は人間一人を大人にするまでに抗ウイルス対策のための莫大な金銭と労力をつぎ込む必要があるからだった。  そんな時代になって、貴重な資源である人間を減らすような無謀な戦争は続けられない。しかし、相手が譲歩しない限り戦争は終わらない。そこで指導者達は戦場に人間の代わりとして大量のロボットを送り込む事にした。  しかし、そこには一番重要な問題があったのだ。  そう「ロボット工学三原則」だ。ロボットに人間を殺す事は出来ない。この原則は全てのロボットの人工頭脳の最も基本的な命令に、書き換え不能命令として不揮発化されていた。  そのために戦争に投入できるのは、人口頭脳を持たない人間による遠隔操作ロボットのみであった。これでは柔軟な発想を持った優秀なコマンダーによるビームサーベルやレーザー兵器の的にしかならない。  そこで指導者たちは考えた、ロボット同士で人間の代理戦争をさせれば良いのだ、と。  人間、考える事は同じだった。敵国の指導者も同じ事をほぼ同時に提案してきた。  (1)戦争には人間を一切参加させない。  (2)特定された地域を戦闘エリアとし、そこへの人間の立ち入りを禁止する。  (3)戦闘エリアをどちらかのロボットが完全制圧した時点で、制圧したロボットを持つ国の勝利とする。  そうして選ばれた戦闘エリアの一つがこの街だった。  戦争はロボットの性能向上がカギとなった。お互いの国は総力を挙げてロボットの能力とロボットが使用する武器の能力を高めていった。大量破壊兵器では、戦闘エリアの味方側のロボットも破壊する事になる、従って使える武器は全て局地戦向けのロボットに対する武器だった。  例えばビームサーベル、レーザー銃、超振動ナイフといった武器だ。これらの武器を用いたロボット達の白兵戦が基本的な戦いとなっていた。まれにロケット弾等の敵陣地を破壊する兵器も現れた、しかしロボット達の高速移動能力に比べるとロケット弾は遅すぎて無意味だった。  そして生まれたのが DIANA-141 シリーズのアンドロイドだった。  全ての人工頭脳が高速通信回線で接続され情報は共有される。必要な演算能力はDIANA-141シリーズのアンドロイド全員の人工頭脳による超並列演算処理だ。これを開発した研究員達は、これで平和が来ると確信した。  しかし、あまりに性能が良すぎた。その能力の高さに恐怖した敵国は大量のスパイを動員しDIANAシリーズの設計図を盗み出す事に成功した。そしてお互いに同じタイミングで実践に投入したのだ。  将棋で言う処の千日手状態になった両国の戦争は完全に膠着状態に突入した。
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