さがしもの。

1/6
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
ーーーーどおおおんーーーー 遠くで、花火が上がったような音が聞こえたような気がした。  なかなか梅雨が明けないなあ、変わり映えのしない天気予報を横目に雨宮紗織は溜息を吐いた。しばらくすると、アナウンサーの声色が変わる。 「たった今入ったニュースです!先ほど西区加茂町の空き地に隕石のようなものが落下したとの情報が入ってきました。近所の住民の話によりますと、”まるで星が降ってきたようだった”とのことです」 「星ぃ?もうすぐ七夕じゃん。夫の浮気に嫌気がさした織り姫様だったりして〜〜」 ミステリー小説を読みながらバカにしたようにそう言うのは、ファンタジー嫌いの妹、郁だ。 ファンタジーや可愛いものが好きな紗織とは正反対で、服も無地で暗い色を着る。 「西区加茂町って言ったらバスですぐじゃない!幸い今日は雨じゃないし。まだ六時だからバスあるはずだよ!行ってみない?郁」 「やだよそんなの。お姉ちゃん一人で行って来なよ」 「でも本当に隕石だったら?何だかミステリーの香りがしない?」 「確かにそうだけど・・・」 「じゃあ、行ってみようよ?ね?」 紗織の勢いに負け、郁も渋々付いていくことになった。バスに乗って現地に着くとすでに立ち入り禁止の黄色いテープが貼られていて、ちらほらと警官の姿もあった。黄色いテープの先には大きな穴が開いていて、直径二メートルくらいのエメラルド色の岩が転がっていた。二人は警官の目を盗んでテープをくぐり抜け、こっそりと岩に近寄った。遠くから見ると岩にしか見えなかったそれはごつごつとしたカプセルだった。薬そっくりなのだ。 「ねぇ・・・これ何?」 「本物の隕石なんじゃないの?綺麗な色・・・」 「でも、何かそこにドアみたいなのない?」 ぽーっと見とれる紗織に対して郁は冷静だ。炭酸ジュースの蓋を開けるような音が小さくしたかと思うとドアらしきものが開いて何かが出てきた。 「ひっ!」 郁は反射的に紗織の後ろに隠れた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!