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「隕石じゃなくて宇宙船とか!?」
紗織は目をキラキラさせている。中から出てきたのは目のくりくりした小さな男の子だった。得体の知れないものが出てくるとばかり思っていた郁は少しだけほっとした。男の子は周りをきょろきょろと見回している。最初に話しかけたのは紗織だ。
「どうしたの?君はどこから来たの?」
どう考えても空からだろうと郁は心の中でつっこんだが、男の子はそれには答えず、
「お母さんとはぐれちゃったの」
と言った。
「そうなの!?可哀想に。一緒に捜してあげるから、こっちおいで?」
「でも・・・」
男の子はズボンの左側のポケットをぎゅっと握ると右手で警官を指さした。
「大丈夫!お姉ちゃんたち抜け道知ってるから。ね?郁」
隣にいるはずの郁は少し離れたところで固まっている。姉の行動力に驚いているのだ。男の子を連れて歩き出そうとしている紗織の横に慌てて並ぶと、ひそひそと尋ねた。
「お姉ちゃん、怖くないの?」
「何が?」
「だってその子、隕石から出てきたんだよ?ってことはさ・・・」
「そうかもしれないけど、こんな小さな男の子だよ?もうすぐ暗くなるし、一人じゃ危ないでしょ」
「いや、うーん・・・」
二人は、いや三人はその場をうまく離れることに成功した。そして帰りのバスの中紗織が聞く。
「お母さんとはどこで、はぐれちゃったの?」
「お買い物してるとき」
もし私の仮説通りなら、お母さんはこの日本にはいないんじゃないかと思う郁。日本どころか世界中どこにも。それを分かっていながら知らないフリをして普通に話をしている姉は凄い。
「どうしてお母さんと一緒にいなかったの?」
「僕、欲しいものがあって。近くに見えた気がしたから。でも、違った。すぐ戻ったんだけど、もういなかったんだ」
「何が欲しかったの?」
「きらきらしたやつ。空のあれ」
男の子はバスの窓から空を指指した。
「「星!?」」
紗織と、それまで黙って聞いていた郁の声が重なった。
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