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春(3)
「平川 和真。クラス委員長だよ」
背の高い彼はそう言って、大人びた笑みを日菜に向けた。
朝のホームルームのあと。そのまま始まった学活で、最初に決まったのがクラス委員長と副委員長だった。
和真は自ら手を挙げて、クラスメイトたちに拍手されてクラス委員長になった。副委員長になった女の子は和真の推薦だ。こちらも満場一致で決まった。
どうやら一年のときも、二人がクラス委員長、副委員長だったらしい。
先生から引き継いで、テキパキと進行役をこなす和真と。白いチョークを手に書記役をこなす副委員長の姿を、日菜はすごいなぁ……と、見つめていた。みんなの前で自己紹介するのだって恥ずかしい日菜には到底、無理だ。
きっと一年間のあいだに関わりあうことも、大してないだろう。そう、思っていたのに――。
一時間目と二時間目のあいだの休み時間に声をかけてきた和真は、まずは教室と同じ階にあるトイレと水道場の場所を教えてくれた。
「こういう話は本当は女子からの方がよかったんだろうけど。橋本のやつ、次の時間の準備で先生に連れてかれちゃったから」
ごめんね、と言って苦笑いする和真に、日菜は黙って首を横に振った。副委員長の女の子は橋本さん――と、いうらしい。
そんな風に気が使えるなんて、やっぱり大人だ。
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