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危険色の針路
その1
剣崎
「ナイス、ショーッ…!」
うーん、土砂降りの中、接待の”芝刈り”はキツイ…
...
「…いやあ、あいにくの天気だったが、なかなか楽しかった。”会話”も弾んだしな…。相馬さんにも加わってもらいたかった。はは…」
「”楽しい会話”は会長にも、しっかり耳に入れますんで。お二人とも、本日は”有意義”なお時間、ありがとうございました。大雨ってこともありますが、今日は”忘れられない”と思います…」
「うむ…。矢島君、剣崎君、今日は君たち二人でよかった。では、我々は先に失礼する」
終わった…
ふう…
県警と本庁のお偉いさん二人をクラブハウスからお見送り完了で、まさに一息ついたわ
...
その後、矢島さんが今日宿泊するFホテルの部屋に寄った
「…しかし、改めて驚いた。例の”近い将来”の話、ホンマもんだろう、剣崎…」
「はい。本庁からも同じ話ですからね。もうタイムスケジュールに乗っかってるんでしょう」
「ふう…、”バラ色の人生とは、未来を見通せるものだけが享受できるもの”か…。なんともな。でも、想像もつかんわ、今日みたいに”墨”背負ったモンが、サウナも入れない、銀行口座も開設できない。ホテルで集会も開けん、不動産も買えないって…。この国は極道を本気で壊滅する気なのか…」
「ここで重要なのは、一概にやくざだ極道だと言っても、消し去るべき対象は広域暴○団だけってことです。全国組織に加盟してなければ、連中からしたら潰すべき暴○団でないということになりますから…」
ソファに深く腰かけた矢島さんは、両手を頭の後ろへ組みながら大きく頷いていた
...
「だから、終戦以降、東西両広域組織の傘下に組み込まれていない我ら相和会がだ、これからも広域暴○団に吸収されない…。これは彼らにとって、極めて重要な意味を持つことなんでしょう」
「そのようだな。全国組織と堂々と渡り合ってる、日本でも稀有な相和会の存在ってことで、前々から県警は鼻が高かったらしいからな…(苦笑)。何しろ、あの人たちが”独立系の雄”って言ってんだからよう。ハハハ…」
「…でも、今日のメッセージは我々にとって、いずれも重大な意味が込められてましたね。あの方たちは、若が亡くなった後の相和会にどう進んでいってもらいたいのか…、今日はっきりしました…」
そうさ…
権力側は今日、会長が持病で他界した時、相和会の”今後”はどうあるべきかを示唆していた
後継は矢島さんで行けと…
建田さんではないぞと…
県警と権力側は、経済派ではなく武闘派を指名してきたんだ
このことは、矢島さんと俺にとって、極めて重大な意味合いを含むぜ
...
そのあと、矢島さんも俺も、”その辺”の意識から、”しかるべき際”を想定していた
それは互いの顔を見ればわかることだ
なんといってもこの春、会長自らが後継と公言していた若が死んだんだ
よって、これからは組内で後継争いが再燃する
二人は、自然と建田さんを念頭に置いた話題に移って行った
...
「剣崎…。オヤジ、また遠縁の娘を増やしたって、本当か?」
こういった話の流れの中で、さりげなく、”こんな視点”を持ち合わせていることが、矢島さんの切れ者たる由縁だ
麻衣はもとより、さらにもう一人の横田競子も、本家付きの俺が会長”直”で面倒を見ることになる
それはすなわち、若が亡き今後は、2代目を争うことになる建田さんが触れられない部分ってことだ
ションベン娘だからと、矢島さんはアタマから、”このこと”を軽視していない
当然、俺も”その時期”を迎えれば、あの娘達を”使える”と踏んでいる
ましてや、あの厄介な”白い粉”が絡んでいるんだからな…
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