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その3
剣崎
やっぱり緊張してるようだな…
よし、移動中にサワリくらいは耳に入れとくか…
「…向こうでは、会長と二人での話になる。まあ、1時間くらいで済むだろう。主に今後のことになるが、一応、俺からも下話しをしておくよ。いいか…?」
「はい…」
ケイコは硬い表情でそう答え、頷いた
...
「…今、部屋を探してるが、たぶん来月になりそうだ。そう心つもりしていてくれ」
「わかりました」
「それと、麻衣とのことだが…。ヤツは南玉連合に戻り、そこで君と競い合いたい考えのようだ。君の方はどうだ?」
「私は麻衣が南玉の中だろうが外だろうが、アイツとは一歩も引かずにやり合っていきますよ…」
ケイコはきっぱりと言い切った
相馬会長は麻衣とは”違う”この子のことを気遣っているが、今日は”それなり”の範囲まで言及するはずだ
場合によっては、相当際どい領域にまで話が及ぶかも知れない
あの人はこの普通の高校生を試す…
そして、心の準備がまだ整っていないと判断すれば、麻衣との第2ランウンドに”待った”をかけるだろう
相馬会長は、あくまで二人をフェアなレールに乗せてから次の段階で競わせる考えだよ
...
俺からの話はケイコの様子をチェックしながら、途切れ途切れって感じだった
その間、この子の硬い表情は崩れなかったな
で…、総本部までもうすぐだというところまでくると、ケイコから話しかけてきたわ
「相馬会長さんは、健康状態いかかがなんですか?」
彼女の問いかけは会長の体調についてだった
ちょっと意外だったので、やや拍子抜けしたが、これはかなり重要度の高い側面を伴っている
俺は言葉を選んで、慎重に答えた
「持病を患っていて入退院は繰り返しているが、今時点で深刻な問題はないよ。でも、どうしてこんなことを聞くんだい?」
後段はもろ、素朴なこの子への疑問だった
...
「あの会長さん、麻衣と同じ眼でした。この前、初めて会ってすぐそう感じたんです。だから…、もし、死生観も麻衣と同じだとしたら、通常なら目の前のコト、そこから逃げないってなります。でも、自分の死期とか概ね予測が付いちゃってる場合には、残された時間を逆算して、何をやり遂げるかを熟考して慎重に選択して、その上で決断してだと…。そう思うんです」
「!!!」
俺は言葉が出なかった
そういうことなのか…
この子、そこまで見切った上でなのか…!
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