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その2
剣崎
「ええ、一人目の麻衣とは正反対の、どこにでもいるような女子高生です」
「ほう…、一人目みたいなズベじゃねえのか?」
矢島さんは意外だなという反応ではあったが、やけに興味深そうに尋ねてきた
「ですが、麻衣とのケンカでは殺し合い寸前までの気合いでした。会長は一目で、その子を気に入った様子でしたよ」
「そうか…、オヤジの眼鏡に叶ったのなら、それなりの娘ってことか…。ふん、一人目の麻衣って子、組のモンも獣のような目で気性も会長にそっくりだってんで、本気で血が繋がってると思ってるようだが。今度はどうかな…(苦笑)」
「二人とは、一度、会いますか?」
俺は咄嗟の思い付きだったが、あえてこのタイミングで矢島さんに打診してみた
...
「…いや、まだいい。それで…、ここんとこ、俺の耳にも入ってきてるんだ。東龍会の筋でよう…。星流会が押していたガキども、麻衣を使ってお前がおん出したってな。無論、オヤジの意志が働いてってニュアンスになるが…。そうなのか?」
「はい。会長はそれ、見据えてましたから。ですが、そのガキのグループを仕切っていた男を追い込んだのは実際には、麻衣です。我々も力は貸しましたが、はっきり言って麻衣の裁量でした」
「ふふ、らしいな…。勝田が感心してたわ。年上のガキ大将を手玉に掛ける手並みなんか、やくざ顔負けだってな」
「親分…。そのガキ大将、諸星さんが目をかけていた砂垣って愚連隊の顔役なんですが、そいつを嵌めたのは確かに麻衣でした。しかし、事実上砂垣をバージさせたのは二人目の、ケイコって子なんです」
「…」
矢島さんは表情を崩すことはなかったが、サングラスの奥で目が一瞬光った
...
「…ケイコは、相馬会長も懇意の紅丸さんの娘で、怪物と言われた紅丸有紀、それに麻衣がチームを結成する時にアタマを要請した元南玉連合幹部の高原亜咲とは、いずれも幼い頃から私的に強い繋がりがあったそうで…。今回は本人の意図することではなかったそうですが、結果的に砂垣に引導を渡したことになります。ガキどもの界隈では、砂垣を南玉連合に謝罪させたのは横田競子という認識に至っていますし」
「なるほど…、一見どこにでもいるような女子高生でも、”そういう素地”を持ってるってことなんだな…。そのことで、麻衣の対抗心に火が付いたと」
ここで矢島さんは、二人の構図を理解したことで、その”延長線上”…、つまり我々業界内へも何らかの”波及”があるかもしれないとの考えが巡ったようだ…
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