危険色の針路

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その4 剣崎 その夜、総本部に戻ったのは夜8時を過ぎていた 「親分、本日はお疲れ様でした!」 「…会長はいるか?」 「はい、先程より庭で晩酌を…」 「よし、この足で会って来る。お前らはもう外れていい」 俺は、本家部屋付きの若い組員にそう指示した 今夜の話は、誰にも聞かせられないからな… ... 会長は庭で一杯やっていた 「遅くなりました…」 「おお、剣崎、今日は雨であいにくだったな。へたっぴ相手で疲れたろう。まあ、一杯やれ」 「会長、若いもんは下がらせましたので、中でよろしいですか?」 「…よし、奥で待ってろ。今行く…」 会長は即、察してくれたようだ ... 「…ふん、例の話をな…。それらしきことは、先日県警で会った際に匂わせてきたが。今日は正式ってことだな。本庁連れての上でなら…。それで、矢島と剣崎でよかったとな…。やっこさんら、俺がくたばっちまった後の”中”まで口出しかよ。はは…」 「会長…、先方の意向は”正しく”運ぶと答えましたので…」 「ああ、分かってる。言わねーよ、誰にも。連中の望み通り、来たるべき時は”それ”、しっかり利用して先を見通せばいい」 まずは安心した… 権力側は、相馬会長が万一の際には矢島体制を求め、その上であの法改正を織り込んだ、組の将来進むべき針路を賢く定めろとのお達しだ 先方も大きなリスクを冒してのリークだしな 有難くも、それこそ、賢く活用させてもらう その大前提が、建田さん側には絶対に漏れないということになる 会長に”ここ”を承知してもらったことは、今後を考えると重要だ さて、もう一点の方はどうか… ... 「だが、こっちの内部のことまでは、余計なお世話だと言ってたとな…。そう伝えとけ」 さすがに、これはそうなるか… 「…剣崎よう、定男が死んじまったんだ。もう跡は矢島か建田になる。西も東もよう、ウチがまた後継争いでガタつくと読んでるさ。俺があの世に行っちまったら、後のことは残ったもんで好きにすればいい。ただしだ、俺の目の黒いうちは、たとえ日の丸の言うことでもよう、”はいわかりました”はない。まあ、県警には、今度会ったら俺からもはっきり言っとくがな」 「はい。その通り伝えますので…」 うん、これでいい 相馬豹一という人間を、警察は十分すぎるほど承知してくてるしな 要は、会長が逝かれたら、俺が矢島さんを2代目のイスに就かせればいいんだ
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