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その5
剣崎
業界内では、相馬豹一という男は何を考えているかわからない、誰も考えないことをしでかす…、そういった見方をされている
その起因になっているのが、いわゆる相馬会長のお家芸でもあるダブルミーニングだ
どっちとも取れる発言や行動で周囲を惑わせ、真意を掴ませない
業界の連中は皆、相馬会長がどう出るかを図ることができす、今まで散々振り回されてきた
何しろ業界のセオリー無視など日常茶飯事の、自他ともに認めるイカレ極道だ
組を潰すことも命を失うことも屁でもない…、あの気狂いなら、何をしでかしても不思議ではないと…
その結果、相馬豹一は数々の伝説を生み、東西の広域組織から一目置かれる独立系やくざの雄と評価されてきたんだ
...
だが、身近に着いている俺などからすれば、極めて分かり易い人間だと言える
今、会長が口にしたことは100%信ずるに値するよ
県警が、暴○団対策における将来的な法整備のレールが敷かれていることを、広域暴○団に屈しない相和会へのご褒美として事前リークする主旨を、会長は正確に汲取っている
しかしその上で、権力サイドが将来も広域暴○団の傘下に加わらないことを求める件は了解したが、先方が相馬豹一の後は矢島体制を要望していることについては、完全に内部干渉と拒否した
その上で、先方のリークというボールの”投げ先以外”には秘匿することを確約した
これは極めて明快な、あちら側への回答になる
一応、これで権力側にも矢島さんにも顔が立つ
...
ここで会長は、”我々”と同じ考えを巡らしたようだ
「剣崎、せっかく日の丸さんがおいしいネタをウチだけに囁いてくれてんだ。数十年先の業界での”勝敗”はもうついてるに等しい。ガサガサ蠢いてる連中が行動に出たらだ、遠慮なく行ってやれ!」
「はあ…。それは東龍会ってことですか?」
「当たり前だろ。坂内の野郎、星流会挟んでまたセコイちょっかいを出してくる。時期にな。その場合、前面には性懲りもなくガキだぞ。そしたらこっちは、かわいいお嬢ちゃん軍団で返り返討ちだ」
やはりか…
「しかし今回、諸星の子飼いだった砂垣ってガキ大将からは墨東会を奪い取った上、追放して、それこそ返り討ちにしてますが…」
「アホ!あんなのはな、お返してしてやったって言うんだ。いいか、次は諸星のフヌケなど飾りになってる。実質、坂内が絵を描くぞ。ヤツにはガキ活用のスキルアップを考えてる節が見える」
これは少々驚いたな
坂内さんが星流会のガキを使ったスキームに関心が強いとは聞き及んでいたが、まさか会長がここまで読み込んでいるとは…
「では、その場合に対抗しうる勢力を、麻衣とケイコを使って作り上げる必要があるということですか?」
「いや、ちょっと違う」
会長はチラッと笑い、まるで子供のように目を輝かして説明に入った…
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