危険色の針路

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その6 剣崎 「…麻衣が春先から一連の行動を起こしてよう、先日の天王山でだ、ガキの世界は大激震に見舞われたわな。もう男など傍に追いやられ、これからはお嬢ちゃんたちが、この地のガキどもを先導するという基盤は出来上がったと見ていいんだ。ケイコみたいな普通の女の子が表舞台へ出て、ますます猛る女は”中心”に近づく。それが何を意味するか剣崎、考えてみろ」 「…」 俺は分からなかった 中心って、一体何を指しているんだ! ... ここでまた、会長はニヤリといたずらっぽい笑みを浮かべた 「…麻衣とケイコがだ、この後、もっともっとしのぎを削り合えば、求心力がマックスに達する。そんな日、そうは遠くないぞ。仮にその土壌が醸成されていれば、坂内が極端な話、やくざと大差ない男達を放ってきてもよう、麻衣とケイコが立ち向かうだろう。それはだ、何もお手手つないでタッグチームを結成とかじゃない。本人たちも気が付かずに協力し合ってるってイメージだ。これからは、そこへ行き着くための作業だと考えとけ」 「はあ…」 ここまで来ると、すぐに思考が追い付かなかった この人は、そんなところまで見通して、麻衣をより”本気”にさせる好敵手の出現を待ち望んでいたのか… ... 「…その際に一番肝心なのは、後ろに潜んでる東龍会を引っ張り出すことだ。そして一気に潰しちまえ。それは、政治的な制裁を含んでのことだ。麻衣たちには、目の前のガキが敵ではないことを認識させるんだ。戦ってる本当の相手は、バックのやくざ、しかも星流会などの枝じゃなく、その後ろの広域直系と捉えさせてな。勿論、相和会はお嬢ちゃん軍団のバックに着く…」 ふう…‼ 相馬会長の発想には、いまさらながら仰天させられる… 標的を関東広域の有力直系である東龍会に定め、然るべき挑戦に出てきた際、敵はガキを前面に立ててくる… こっちは、その前面に高校生の少女たちを押し出すことで対抗すると… しかも、直接対峙するガキの”後ろ”を、関東直系と自覚させての上でだ…! ... 「そうなると会長、ケイコはどういう方向に持っていくべきなんでしょうか」 「あのな、お前なんかが余分な方向つけなどしなくていいんだよ。あの子は麻衣と向き合う環境さえ提供されれば、地の果てまで突き進む。それを受けて麻衣もな…」 「…」 俺はただ、黙って聞くしかなかった…
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