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3(最終話)
山崎健一郎は画面の中で何が起きたのか分からなかった。
松岡伊織の部屋を終始監視していると、突然来客が訪れたのだ。一瞬彼氏かと思い、激しい嫉妬が渦巻いた。
だが、伊織にここ一年彼氏がいないのを思い出し、山崎は冷静を取り戻すことに成功した。では、いったい誰なのか。時刻は二時になろうとしている。
パソコンの画面で伊織が硬直していると、イヤホンから別の女の声がした。
「なんだやっぱりいるんじゃん。伊織、私だよ。真紀だよ。心配だから来たんだけど」
玄関に設置した盗聴器が反応していた。どうやら、さっきまで電話で話していた真紀という女が、やって来たらしい。山崎は、ほっと胸を撫で下ろした。
そして伊織の方も、画面の中でしゃがみ込んでいた。やはり感情がリンクしている、と山崎は思った。彼女が安心すれば彼も安心し、彼女が喜べば彼が喜ぶ。俺たちは目に見えない糸で繋がってる――。
伊織が何とか立ち上がり、玄関の方へ向かった。パソコンの画面がリビングから玄関に切り替わる。伊織は鍵とチェーンを外し、扉を開けた。真紀、という女が立っていた。来訪者と伊織の両方が見えるアングルに小型カメラを設置したのは正解だったな、と山崎は思った。
「真紀、ありがとう、わざわざ来てくれて」
「うん。いいよ。気にしないで」
山崎が目を疑ったのはその時だった。
突然、女の腕が伊織の胴体に伸びた。山崎はパソコンの画面を凝視した。すると、女の手に銀色の何かが握られているのを確認した。何だろうと思ったが、忽ち伊織の腹が赤く染まっていくのを見て、女が持っていたのは包丁だったと彼は驚愕した。
殺された。伊織が殺された。嘘だ。嘘だ嘘だ。
山崎は椅子から落ちていた。悲しみ、怒り、恐怖、様々な感情がぐちゃぐちゃになって彼の心を乱した。
山崎は震えた足で立ち上がった。画面を見ると、カメラがリビングに切り替わっていて、そこに女が佇んでいた。
その女がにやりと笑い、黒い目をカメラに向けた。
「これで、私だけを見てくれるね」
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