0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいまぁ〜」
空を見上げてから、ほどなくして一緒に住んでいる彼女が帰宅したのだった。
「おかえり。今日は早かったね。美咲」
「うん。今日は面白くなかったから、早めに抜けてきた〜。これなら早織と一緒にいる方がいいや〜って思って」
片手にビニール袋を抱えながら、おぼつかない足取りで私のところへと歩いてきて、私のすぐ隣まで美咲は近づいてきた。
「そう言いながら、十分お酒くさいんだけど」
「そりゃ、お酒飲んでるもん」
「なら、どうしてお酒飲んでる人が、またお酒を買ってきてるの?」
「だから〜。今日は面白くなかったから、早織と呑もうって思って〜」
「はぁ……。わかったからとりあえず、一回お水飲んできてくれる?」
「はぁい」
美咲は持ってきたビニール袋をその場において、キッチンの方へと戻っていった。
なんとか倒れることなくキッチンまでたどり着いた美咲を見てから、私は美咲がコンビニで買ってきたお酒をビニール袋の中から一つ取り出して、缶を開ける。
開けた缶からは、お酒特有のツンと来るアルコールの刺激と共に、梅の甘い匂いが漂ってきた。
「やっぱり、それだったかぁ」
いつの間にか戻ってきていた美咲が私に話しかけてきて、自分もビニール袋の中から一つ缶を取り出す。
「それで最後にしときなよ」
「うん」
言ったところで聞いたことのない押し問答をしてから、美咲はお酒に口をつけた。
「それで、こんなところで何してるのさ。早織?」
「流れ星を見てる」
「流れ星?」
私と同じように空を見上げる美咲であったが、すぐにこちらへ顔を向けて来る。
「流れ星なんてないよ」
「そんなすぐには見えないでしょ」
「そんなもんかなぁ……」
流れ星を待っている間も美咲はお酒を仰ぎ、私も自分の持っていた梅のお酒に口をつける。
「それで、何をお願いするの?」
「えっ?」
「えっ?って、流れ星って言えば願い事でしょ? そのために見てるんじゃないの?」
美咲に言われてから、なんで今まで思い出さなかったのかと不思議に思うほど、その意識は私の中にはなかった。ただ、流れ星見てみるかという気持ちだけがあって、私は今の今までただ空を眺めていただけであった。
だから、願い事なんて何にも考えていなかったので、美咲の質問に答えられるわけもなく、美咲にそのまま投げ返すことしかできなかった。
最初のコメントを投稿しよう!