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「美咲は何かある? 流れ星にお願いしたいこと」
「う〜ん。そうだな。いっぱいありすぎて困るなぁ〜」
左右にゆらゆらと揺れながら、自分の願い事について考える美咲は楽しげであった。
「宝くじを当てたい!」
「それはまた大きな夢ね」
「あとはね、イケメンと付き合いたい!」
「いくらなんでも、欲が多すぎるわよ……」
「いいじゃん。夢なんだから。夢は大きくないと!」
「夢は大きくねぇ……」
美咲が言った“夢”という言葉に触発されて私は自分の夢が何かを考えてみた。
地元から出て、今の大学に通うきっかけなんてものは特になかった。人並みに勉強して、人並みの偏差値の大学に進学すればいいと高校時代は考えていた。誰も私の考えに否定する人はいなかったし、やりたいことがないのなら、とりあえず進学だけはしておいたほうがいい。それが、私の親と学校の教師の言葉だった。
結局大学に進学して二年と少しが経過するけど、自分の夢どころかやりたいことすら見えてこない。
いつになったら自分の夢が見えてくるんだろうか。そんな風に思いながら残り半分になったお酒の重さを右手に感じながら、真っ暗な空を見つめる。
「な〜にも、見えないね」
美咲が不意に言った言葉がまさに私が考えていた言葉そのものであった。まるで、今の夜空のように私の未来、夢が全く何も見えなかった。
「ほんとに流れ星見えるの?」
「天気予報では今日までなら見えるって言ってた」
「ふう〜ん」
すっかり興味を失ったのか美咲はスマホを取り出して、スマホに視線を落としていた。
そんな美咲のスマホにちらりと視線を向けるときらびやかな画像なんかが映し出されていた。
それは、私とは全く別の世界。私とは違い、美咲にとってこの世界はもっと輝いて見えるのだろう。街を歩けば、いろんなものが輝いて見えて、いろんなものに興味が惹かれる。だから、私たちの頭上のこんな暗い世界には興味がないのも仕方がない。
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