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「でも、結構流れ星見えてるらしいよ」
「えっ?」
美咲の言葉に反応するのと同時に美咲の方を向くと、私の方に向かって自分のスマホの画面を向けていた。
その画面にはSNS上で色んな人が流れ星について呟いているコメントが並んでいた。
「場所が悪いのかな……」
再び美咲はスマホとにらめっこを始め、私はもう一度空を見上げた。
「あっ」
その時、一つの白い線が黒い闇に浮かび上がった。
「なに?」
「いや、流れ星見えた」
「えっ、ほんと!?」
美咲はスマホから頭上の空を見上げて、じっとその瞬間を待った。
「それで決まったの。早織」
「なにが?」
「願い事だよ、願い事。まだ、答え聞いてないんだけど」
「願い事ね……」
美咲にそう問いかけられるが、やはり願い事なんて一つも出てこなかった。美咲みたいにお金持ちになりたいともそこまで思わないし、イケメンの人と付き合いたいともそこまで思わない。もっと、こう。少しでいいから今の人生が楽しくなればいい。そんな風にしか思えないのだ。
「幸せになりたいかなぁ」
「幸せってなによ?」
「う〜ん。わかんない」
「お金が欲しいの?」
「違うかな」
「じゃあ、彼氏?」
「そういうのでもない」
「じゃあ、なにさ」
お酒の匂いを漂わせながら、私に詰め寄る美咲であったが、答えられようのないことを質問責めにされてもどうしようもない。私はだんまりを決め込むことしかできなかった。
「ねぇねぇ、今までに早織って好きな人とかいなかったの?」
「なんで、いきなりそんな話になるのよ……?」
「いいから、いいから」
少し、今までのことを思い出していくと一人の人物が頭の中に浮かんできた。
それは、私がまだ中学二年生だった時のこと。同じクラスになった一人の男子生徒の面影。
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