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「いたけど……」
「へぇー! どんな子なの?」
「どんな子って、美咲には関係ないでしょ」
「いいじゃん。私たちの仲ってことでさ〜」
すっかり酔いが回っているのか、妙に芸達者なその口車は私がここ数年で知り得た彼女の性格そのものであった。
それが人によってはめんどくさいかったり、嫌な感じに聞こえるかもしれないが、私としてはそうやって巻き込んでくれることが助かっていたりした。そうやって会話を始め、徐々に弾んでいく彼女との会話は楽しいものであったからだ。
「同級生だった人よ」
「へぇ〜 いつの話?」
「中学二年」
「だいぶ、昔なのね」
「それから受験で勉強してたし、高校でも勉強ばっかりやってたから」
「大学でも勉強だもんね」
「そうね」
全くその通りだった。私の人生を思い出せば勉強、勉強。日本に住んでいれば大抵の人は六歳にもなれば、学校へ通い勉学に励む。そして、大学まで行くことになれば二十歳くらいまでの約十年以上にも及ぶ勉強地獄である。
「私なんか、全然勉強してなかったわ〜」
「よくそんなので、この大学入れたわね」
「まぁ。好きな人がいたから……」
先ほどとは違い、冷めきった声で美咲はそう呟いた。
「それ、初めて聞いたんだけど……」
「そりゃ、そうだよ。初めて人に話した」
美咲は飲み終わったのか、手に持っていたお酒の缶をその辺りにおいて、ビニール袋から新しいお酒を手に取り、封を開けた。
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