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「そっか……」
「帰国した時に連絡しなかったのに、今更だよな」
「そうだよ。もっと早くに言ってくれれば良いのに」
「はは。そうだよな」
強引に抱きしめてくれたら、心も揺れるだろう。だけど、聡は良くも悪くも、誠実な人間だった。
二人の距離は縮まることもなく、手すら触れずに杏奈たちは別れた。
*
後日、結婚の価値観が違いすぎて、杏奈は啓吾と別れた。あれほど必死に時間を作って会っていた恋人だったのに、最後は呆気なく涙も出ずに終わった。それでも、少し杏奈の心には痛みが残った。
それが消えたら、いつか行けるだろうか。
聡と、星の降る葡萄の丘へ。
終
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