僕はアーマノイドに告りたい

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「皆さん、あと5分で世界は壊滅します……せめてこの残り少ない時間を、大切なご家族、友人達とお過ごしください。私は報道人として、人生を(まっと)うします。ゆみ、お父さん最後まで頑張るよ」  テレビではニュースキャスターが涙を流しながら、最後の別れを告げていた。  三日前に小型の太陽系新惑星が確認され、世界は世紀の大発見に沸いた。しかし、その軌道は想定外の動きを示し、昨日、まもなく地球に衝突するということがわかった。ライブ中継番組の科学者討論会では、何も打つ手はないと(あきら)めの結論を出していた。 「まあ、いまさら(あせ)ってもしょうがないけど、心残りがひとつあるな……」  僕は高校一年生、彼女なし。僕らの世代が考えることなんて、たったひとつ。一度でいいから、女の子とイチャイチャしてみたかった。でも好きな子がいる。先月隣の家に越してきたレイナさん、ひとつ年上の高校二年生。キレイな長い黒髪、大きな瞳、初めて見たときから、一目ぼれだった。  両親とは別居しているみたいだ。海外にでも出張中なのだろうか? 一軒家にひとり暮らしという不思議な女の子。  隣町にある僕の通っている高校と同じところに転校してきた。朝出かけるところで、たまに会う。軽く会釈してくれる。笑顔で挨拶してくれるときにできる、えくぼがかわいい。  学校の廊下で見かけることもあるけど、彼女は僕に気づいていないようだ。  同じ電車に乗ったときも、僕は少し離れた場所から彼女を見つめている。とても勉強熱心なようで、難しそうな本を電車の中ではよく読んでいる。   いつか、一緒に学校に登校したりとか妄想もしてみたけど、まだ声すらかけたことがない。  でもどうせあと5分で死ぬんだし、それならいっそ(こく)っておいたほうがいいかもしれない。 「よし、これが最後のチャンスだ。悩むのはやめだ」  僕は席を立つと、急いで玄関を出て、隣の家の前に向かった。玄関前に立つと、大きく息を吸って、勇気を振り絞り、インターフォンのボタンを押した。
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