僕はアーマノイドに告りたい

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「……ハイ?」 「あ、あの隣に住んでいるユウマと申します。レイナさんに話したいことがあって、来ました。少しだけいいですか?」 「ちょっと待ってて」  まもなくしてレイナさんが出てきた。 「何かしら?」  レイナさんは、上目使いの怪訝(けげん)な表情でこちらを(うかが)った。 「あの、実は……」  心臓の鼓動が激しくなる、頭に血がのぼるのがわかる。でも早くしないと、こうしている間にも時間はどんどん経っていく。あと3分しかない。 「こんな時に言うことじゃないと思うんだけど……やっぱり言っておきたくて……二度とチャンスがないと思って……えーっと、あ、あなたの事が……初めて会ったときから……好きでした! 僕と付き合ってください!」  キョトンとした表情から、しばらく考えている様子のレイナさんが口を開いた。 「ありがとう……でもごめん、あなたの気持ちには答えられないわ」 「だれか、好きな人でもいるんですか?」 「違うの、そういうんじゃなくて……私人間じゃないの。アーマノイド(武装生命体)なの」 「え?」  アーマノイド? なんのことだ? 想像もしていなかった返答に、一瞬頭が混乱した。 「私はカシオペア星団第23506783惑星エリースから、地球の生態系調査のために送られた有機(ゆうき)機械体(きかいたい)。地球に小惑星衝突の危機が訪れることを察知して、派遣されたの。考えている時間もないし、あなたの気持ちにはすぐ答えられないけど……心配しないで。君のことは守ってあげるから」  そう言うと、レイナさんの瞳はキラキラと七色に輝き出し、体の周りには円形の光がクルクルとセンサーのように(とも)り、腕からハッチのようなものが開き始め、大きな機械がたくさん現れた。その機械には噴射装置のようなものが装備されていて、青い炎を吹き出し始めた。 「それじゃあ、行ってくるね。危ないから、どこかに隠れていて。フルバースト(最大出力)!」  そう告げると青い炎は勢いをさらに増し、レイナさんは真剣な表情になると、いったん腰を低く沈め、強く足を蹴り上げた。  一瞬視界から消えた彼女を探して、左右、頭上に目をやると……彼女は目前に近づく小惑星に向けて、回転しながら天高く舞い上がっていた。  茫然(ぼうぜん)とする僕は、上空に顔をあげ彼女の後ろ姿を追っていた。青い光の火花が太陽の光を反射して彼女の周りを照らし、まるで天使に生えた翼のような幻想を抱いた。 「対隕石群防御兵器(メテオロンブレーカー)セキュリティー緊急解除。量子波動リアクター(反応路)解放!」  レイナさんの背中のハッチが開き、複数のランチャーのような機械が出現して、彼女の周りに円形に装備された。 「ターゲットロック。プラズマソードレーザー、発射(フィリング)!」  その言葉と同時に緑色の光の矢が、ランチャーから無数に発射された。光の矢は惑星めがけて飛んでいき、やがて着弾すると、大きな光彩の輪を描き、惑星は蒸発するように八方に飛び散っていった。  数秒後に爆発の轟音が地上で鳴り響き、その衝撃波で辺りの家々の窓ガラスは割れ、飛び散っていった。  ふと、腕時計に目をやると、惑星衝突の時刻まで残り時間、10秒前…… 「奇跡が起こりました! 今小惑星は地球衝突直前に、空中分解を起こして……消滅しました。ゆみ……ママ……お父さん、今日おうちに帰るからね」  家の割れた窓ガラスの隙間から、リビングにあるテレビの音が聴こえていた。さっきのニュースキャスターの鼻をすすりながら泣く声が漏れていた。
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