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プロローグ
――地上から見上げる空は高くて、手が届かない。
「めんどくさいから一緒に住めよ」
金城空也は、気まぐれにそう言う。
「嫌だよ。一緒に住んで、雑用とか、なんでもかんでも僕に押し付ける気でしょ」
「わざわざ連絡しなくてよくなるから、俺が楽なんだよ」
そして悪気のかけらもない返事も、自分中心で回っている男らしくて、むしろ清々しくもある。
この男が求めているのは都合よく動いてくれる人間であって、別に自分じゃなくたっていい。そんなことは昔からわかりきっていることなのに、それでも腐れ縁のせいか、ついつい世話を焼いてしまう。
多少、人格に問題があっても、この男は国民的ロックバンドHopesのリーダーであり、バンドボーカルの憧れの的であり、その頂点といっても過言ではない。歌唱力だけではなく、人を惹きつける力、統率力、リーダーシップ、どれをとっても凡人より勝っている。誰から見ても憧れの存在であるこの男の一番そばに自分は、いる。
誰もが憧れる、それはまるで大きな空のようなこの男に、自分もいつかきっと手が届くかもしれないと子供の頃から夢見ていた。それが、儚い夢だとしても、緑川健一は、希望を持ち続けて今に至るのだ。
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