二人きり

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二人きり

四限で授業は終わり、早く帰ろうとした時だった。 「学級委員は集合」 そう担任から呼び出された。 その呼びかけに応えてついていくと大量のプリントの山が出来上がっていた。 それを束にしてくれとのことだった。 ほかに仕事あるのか分からないがすぐ担任は消えプリントの山だけが残った。 仕方がないと思い教室までもっていこうとすると彼と目が合った。 あまりの量に苦笑をしていた。 作業も中盤の頃、プリントが風に吹かれ飛んでいった。 ちょうど、彼の席と自分の席の中間で落ちた。 プリントを拾おうとした指が触れ合った。 時が止まった気がした。 暑かったから開けた窓の外からは運動部の声が聞こえた。 ほんの一瞬だった。 顔が赤くなるのを感じた。 彼と目が合わせれなかった。 ふっと見上げた彼は、いつもと同じだった。 脈があるのを気にしていたのは自分だけみたいだった。 動揺を隠すようにプリントを奪った。 廊下では、男女のクラスメイトの声がした。 デートに行くみたいだった。 声の正体は彼の幼馴染の二人だった。 その二人の声が聞こえた時彼はほんの僅か変化した。 向き合っているから分かることだ。 目だ。 彼の瞳はどこか遠くを見ていた。 でもただただ遠くを見ているのではなく何かに後悔しているみたいだった。 その横顔は儚さを感じた。
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