偽装天球

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偽装天球

暗い室内に女性のアナウンスが流れる。 「…こちらは小熊座です。北半球では一年中見ることができた星座でした。またポラリス、つまり北極星が含まれる星座としても有名でした」 シートに寝転がるアリスの上を、偽物の星々が流れていく。それは確かに綺麗であったが、彼女にとってはやはり物足りないものであった。 「…やっぱりダメだわ」 アリスはもう何度足を運んだかわからない旧天展示館を後にした。 以前は足繁く通っていた場所だったが、本物の夜空を見たいと願うにつれ、段々と足が遠のいていった。 どんなに精巧に作られていても、結局は人工の光と闇。アリスは『本物』を見たいのだ。だがそれは今や叶わぬ夢だった。 惑星政府が開発、発動した、対惑星兵器及びそれに類同する兵器の無力化を意図した惑星防御粒子シールド『ガラハッド』により、以前の様な美しい空は見ることができなくなったからだ。
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