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その日アリスは夢を見た。 お爺ちゃんの家の裏にある丘に登っている。頂上の木の根本に着くと、アリスはくるりと振り返った。 そこには満点の星空が広がっていた。旧天展示館の空とは比べ物にならない程の広さと美しさだった。 「すごいわ!」 アリスはぴょんぴょんと跳ねながら笑った。大小様々な光が瞬いて、クリスマスのイルミネーションを彷彿とさせる。 ふと、視界の端で何かが動いた気がした。そっちの方を見やる。夜空に白い線が走った。 「これって…!」 アリスがそう口にした瞬間、幾本もの光の線が夜空を駆け回った。 暗い空に光の線が現れては消えるその光景が、アリスには魔法のように感じられた。 あぁ、ずっと見ていたいわ! そう願った時、どこか遠くから地響きのような音が聞こえた。 なに?今の音は一体? また、地響き。 いつのまにか夜空からは星が消えていた。そこにあるのは、ただ、静かな闇──。 「アリス!」 その呼び声にはっと目を覚ますと、枕元に父が立っていた。 「ど、どうしたのパパ?今何時?」 「それどころじゃない!アリス、逃げるぞ!」 半覚醒のアリスの肩を揺さぶり、父は自身にも言い聞かせるように言った。 「…『ガラハッド』が破られた!早く避難場所に行かないと!」
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