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「別に寂しくは……」
颯手を振り向き、強がりを言おうとしたら、
「僕は寂しかったで」
と手を握られた。
「颯手、手を繋いだら……」
遥と実穂にまたからかわれると思って引き抜こうとしたら、ぎゅっと握り締められてしまった。
「皆、気づいてへんよ」
颯手が、面白そうに、ふふっと笑う。
「きっと、皆、隣の人のことで頭がいっぱいや。……僕もやけど」
「颯手……」
悪戯っぽい表情の中に、わたしを思う気持ちが見えて、胸がきゅうっと痛くなる。颯手に恋に落ちたのは7歳の時。想いが叶って、今は結婚もしたというのに、わたしはどんどんこの人のことが好きになる。
「……颯手はずるい」
小さな声でつぶやいたら、颯手がまるでわたしの考えていることはお見通しだとでもいうような顔で「何が?」と言った。
(分かってるくせに)
わたしは悔しくて、
「秘密」
と唇を尖らせた。
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