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一棟貸しの古民家は集落のすぐ近くにあって、茅葺き屋根ではなく瓦葺きだったが、『かやぶきの里』の家々と同じ作りをしていた。
「こんにちは」と言って中に入ると、宿の人が待っていて「いらっしゃいませ」とわたしたちを出迎えた。
チェックインをし、一通り部屋の説明などを聞いた後、宿の人は帰って行き、私たちだけになった。さっそく皆で、家屋の中を見て回る。
「ダイニング、ひろーい!囲炉裏付きのテーブル!」
実穂が歓声を上げると、その奥で、
「キッチンの設備も整ってるなぁ。自炊が出来そうだ。食器も揃ってるよ」
と横田君がキッチンのチェックをしている。
「部屋は和室が2部屋、寝室が1部屋か……。どういう組み合わせで使うのがいいんだろう」
篠崎君が居室の中をぐるりと見回し、ひとりごとを言っている。平屋の家屋の中には、間を襖で仕切ることが出来る和室が2部屋並んでいて、1部屋だけが洋室になっていた。洋室には大きなベッドが置かれ、窓からは、狭いものの落ち着いた雰囲気の庭が見えている。
「そんなの、女子3人、男子3人に決まってるじゃない!」
遥が勝手に決定し、腰に手をあて、「当然」という顔をした。
「じゃあ、寝室が余らないか?」
「ダブルベッドだもん。使えないでしょ」
「まあ……そうだな」
女子同士ならともかく、男子同士で寝るのは抵抗があるだろう。かといって、この中の誰かのカップルが使うというのは、お互いに気恥ずかしい。遥の言わんとしていることが分かったのか、篠崎君が納得した様子で頷いた。
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