646人が本棚に入れています
本棚に追加
「こちら側にも庭があるんやね」
和室の縁側から外を見ている颯手のそばに近づいてみると、和室側の庭は広く、バーベキューコンロが置いてあった。
「晩ご飯はバーベキューの予定なの。遥が予約しておいてくれたんだよ」
「そういえば、さっき宿の人が『今夜の食材は冷蔵庫に用意してあります』て言うてはったね。楽しみやね」
私が教えると、颯手はそう言って微笑んだ。
リノベーションされた宿は快適で、私たちは夕刻までのんびりと過ごした後、バーベキューの準備に入った。
やはり料理となるとカフェオーナーの颯手の手際が良く、さくさくと野菜を切って、皿に盛り付けてくれる。学生男子2人は、バーベキューコンロに火をおこすのに四苦八苦し、女子3人はそれを応援しながら食器の用意をした。
ようやくコンロに火が点き、バーベキューが始まった。まずは肉ということで、横田君がどんどん焼いてくれる。どうやら彼は、鍋奉行ならぬ、バーベキュー奉行のようだ。
「もう、これ焼けてるよ」
横田君が差し示した牛肉を皆がお皿に取り「いただきまーす」と言って口に運ぶ。
「おいしー!」
牛肉を頬張った遥が満面の笑みを浮かべた。
「本当だね。いいお肉なのかな」
実穂も嬉しそうに食べている。
「あ、ほんと、柔らかい」
私も牛肉を口に運んでみると、簡単に噛み切れて、食べやすかった。
最初のコメントを投稿しよう!