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「颯手、誉と一緒にお酒を飲んでいたのじゃなかったの?」
眠る前のことを思い出し尋ねると、颯手は、
「打ち上げはとっくにお開きになったで」
と言った。
「杏奈と一緒に眠りに来てん」
「一緒に……?」
いつの間に、颯手はわたしと同じベッドの中に入って来たのだろう。ちっとも気づかなかった。
「やっぱり、夜は杏奈と一緒やないと、落ち着かへんわ」
颯手は優しく目を細めると、わたしの額に口づけた。この柔らかな唇に何度も触れられているのに、一向に慣れない。今も、胸がきゅうっと痛くなり、颯手のことが好きだという気持ちでいっぱいになる。
わたしは照れ隠しのように、もぞもぞと颯手の体に近付くと、腕の中にすっぽりと収まった。わたしの甘えたしぐさに、颯手が微笑み、抱きしめてくれる。
颯手のあたたかな体温を感じていると、再び眠気が戻ってきて、わたしは微睡み始めた。ぼんやりとしていく意識の中で、
「杏奈。愛してるで」
颯手の声が聞こえた。
わたしは小さな声で「わたしも」とつぶやくと、心地よい眠りに落ちていった。
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