2.【番外編】一宮杏奈という女の子

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「遥ちゃん。お酒の化粧品があるよ」  美山での観光の帰り。  お土産を買おうと立ち寄った酒蔵で、私(来栖遥)に、今回の旅の同行者である三条実穂が話しかけてきた。  弟に地酒でも買って帰ろうかと店内をウロウロしていた私は、実穂のそばへ行くと、 「どれ?」 と聞いた。 「これ。化粧水だって」  実穂が指さした棚には、原料に日本酒を使用したというメイク落としや化粧水、クリームなどが置かれている。 「しっとりするって書いてあるわね」 「日本酒の成分ってお肌にいいらしいよ。杜氏の人って、手が綺麗だって聞いたことがある」 「へえ~」  そう聞くと、興味が出てくる。  テスターを手に取ってみると、確かにしっとりとした感触だった。 「買ってみようかしら」 「私も。杏奈ちゃんはどうするかなぁ?」  振り返って、もう1人の親友、一宮杏奈の姿を探すと、ダンナと一緒に、店員から接客を受けているところだった。彼女たちも、お酒を買って帰るつもりのようだ。肩を寄せ合って選んでいる姿からは、2人の仲の良さが伝わってくる。 「今は邪魔をしないほうがいいんじゃない?」 「……だね」  私の言葉に、実穂も頷いた。  私の彼氏の篠崎君と、実穂の彼氏の横田君は、何か喋りながら店内を回っている。この2日間ですっかり仲良くなった彼らを見て、意外だと思った。 (篠崎君、無口な方なのに、お喋りな横田君と気が合うとは思わなかった)  彼氏同士が仲良くなるのは、なんだか嬉しい。  私はもう一度、杏奈たちに目を向けた。美男美女の夫婦は絵になる。 (杏奈は、昔から綺麗よね……)  ふと、高校時代のことを思い出した。
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