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私が杏奈と颯手さんの様子を眺めている間に、実穂は化粧水を手に取り、お会計に行ってしまった。
「結婚かぁ……」
思わずぽつりとつぶやいたら、
「結婚がどうしたって?」
ふいに後ろから声をかけられた。驚いて振り向くと、いつの間にそばに来ていたのか、篠崎君が立っていた。
「杏奈と颯手さんを見ていたの。仲がいいなって思って。お互いに想い合ってるのが伝わって来る。あんな夫婦になれたら素敵ね」
そう言ったら、篠崎君は、右手の人差し指でメガネのブリッジをくいっと上げた。そして私の目を見つめると、
「じゃあ、してみる?」
と言った。
「えっ?」
「俺と結婚してみる?」
「……はい?」
私は思わず間抜けな声を上げた。――今、プロポーズされた気がする。
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