(1)スイーツと昔の女性

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(1)スイーツと昔の女性

 大学の長い夏休みが終わり、後期の授業が始まった。  夏休み中は『Cafe Path』の手伝いに頻繁に行っていたものの、授業が始まるとそうもいかず、私は寂しい気持ちで過ごしていた。 「明日は午前中で授業が終わるから、午後から店のお手伝いに行ってもいい?」  晩ご飯の準備をする颯手を手伝いながら問いかけたら、颯手から、 「明日は愛莉さんのシフトの日やし、杏奈は来んでも大丈夫やで」 との答えが返って来た。 「遥ちゃんや実穂ちゃんと遊びに行って来たら?」  颯手は良かれと思って言ってくれているのだろうが、 (違うのに。わたしは『Cafe Path』で颯手のお手伝いがしたいのに) とむくれる。  けれど、無理に出勤したいと言って愛莉のシフトを奪うわけにはいかないので、わたしは仕方なく、 「うん。じゃあ、2人を誘ってみる……」 と頷いた。    翌日、それぞれ受講している講義が終わった後、わたしと遥、実穂は校門前で待ち合わせをして、繁華街・河原町へ出かけることになった。 「お待たせー!」 「ごめんね、杏奈ちゃん。待った?」  同じ学部の遥と実穂が連れ立ってやって来たので、 「わたしもさっき来たところ」 と微笑む。 「そっか、良かった。じゃあ、さっそく行く?」 「うん」  遥が先に校門を出て行き、わたしと実穂もその後に続いた。
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