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わたしが難しい顔をしていることに気が付いたのか、颯手が「どうしたん?」と首を傾げた。
「なんでもない……」
颯手の昔の職場の後輩がちょっと店に来ただけで嫉妬をするなんて、自分の心の狭さに嫌になっていると、颯手がくすりと笑った。
「そんな膨れた顔してどうしたん?もしかして、この人が僕の元カノやないかとでも思って心配になったん?」
図星を突かれて、ドキッとした。
「ち、違うわ!」
ぷいっと、と横を向いたら、
「こっち向いて」
と頬を両手で挟まれた。ためらいながら視線を向けると、颯手はわたしを安心させるように、
「別に、この人は僕の元カノでもなんでもないで。ただの後輩。しかも、たった1ヶ月しか一緒に働いてへん。この人が店にアルバイトに入ってきた時には、僕、もう辞めるつもりでいたし」
と教えてくれた。
「あ……そうなんだ……」
拍子抜けして、ほっとした声が出た。
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